2013年10月17日

艶やかな若草

伊藤君と円先輩の続きになります。
http://drink110.blog29.fc2.com/blog-entry-269.html

 いきなり体が軽くなる。あさひがレモンの上へと投げられた。
「青樹さん!」
 伊藤若葉は瞳に涙を浮かべながら、目の前に立つ雄々しい夫を見上げた。
「若葉、大丈夫か?」
「はい!」
 円青樹が上から舐めるように若葉を見る。若葉は咄嗟に勃起したズボンの膨らみを両手で隠した。
「ふうん……あさひ君に感じさせられたのか」
「いえ……その。あの」
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2012年10月23日

【ハードBL小説】ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇20121023

「あんっ」
喘ぎ声を上げ、響は真っ赤になりうつ向いた。
「もっと声を上げろ。ジョンに聞こえるぐらいな」
らいな」
「もう止めてくれ。頼むから」
「お前はもうジョンと恋人じゃないんだろ?
 だったら俺と付き合えよ。
 優しく愛してやるぜ?」
「お前とだって付き合える筈がないだろ!」
「……そうだな。だったらセフレになるっていうのはどうだ」
「こんなレイプ犯とセフレになるなんて、お断りだ!」
俺はむっとし、響の乳首を捻り上げた。
「ああっ!」
背中を仰け反らせ、天井を見上げる美しい青年。
そのピンク色に染まった背中が俺を誘う。
「お前、本当に嫌がってんのか?
 色っぽい声は上げる、体は興奮しきってる、背中からは汗が噴き出し、
 アナルは俺のペニスを咥えて離さない。
 ほら、今もそんなに締め付けて……もう我慢出来ねぇよ」
俺は響の耳元で囁いた。
「種付けしてやるよ。たっぷりとな」
響はさっと青ざめて、振り返った。
「や、やだっ! 止めてくれ! 中には出さないでくれ!
 頼むから!」
「ここまで来て止められるわけがないだろ?」
俺は逃げられないように、ぐっと響の腰を押さえた。
「いくぜ!」
「やだ……やだやだやだやめてっ!!」
泣き叫ぶ響の顔は何故これ程までに美しいのだろう。
そして嫌がる体は何故これ程まで愛らしく俺のペニスを締め付けるのか。
まるで吸い込むように。
精を吸い上げるように。
絡まり締め付け、腰を振り、誘惑するような瞳で男を見る。
涙で濡れたその瞳。
濡れた睫毛。頬。
誰もが欲しがる麗人のアナルへと俺は興奮したペニスを挿入していた。
「響……愛してるっ!」
「いやあああああああっ! ジョン! 助けて!」

迸る熱い想いが響の体内へ放たれたその瞬間。

「手を挙げろ!」
トイレの扉が開き、大勢のSPが雪崩れ込んできた。
肩に走る鋭い痛み。
性欲が放たれた快感と同時に来る、眠気。
俺は一瞬のうちに眠りへと落ちていった。


 ★


「三鳥井さん、三鳥井さん」
声がする。響によく似た声。そう、学生時代の響は今のように低い声ではなくて、もっと高い声だった。
目を開けるとベッドの中にいる。
濡れた下着。
俺を起こす伊藤若葉。
全て夢だったのか。
「三鳥井さん、下着……替えた方がいいですよ」
夢精した俺を気遣って、伊藤君が小声で言う。
「……ああ、ありがとう」
俺はじっと伊藤君を見た。名波夫人によく似た甘いフェイス。
兄のような冷たさはなく、のほほんとした雰囲気だ。
兄弟なのだが、その雰囲気を感じられない。
いや、髪質とか、所々体格が似ているか。
だが雰囲気が違うせいで他人のようだ。
……この青年も円さんとの関係の中で、兄のような妖艶な雰囲気を醸し出すようになるのだろうか。
いや、その片鱗はもう既に見え始めている。
愛は、そしてセックスは男を変える。
俺は名波を見た。
コカに抱かれ、優しい笑みを浮かべている。安心しきったその寝顔。
こんなに近いのに、遠く……とても遠く感じる。
愛するわけがない。
愛せるわけがない。
俺と名波はライバル会社の後継者なのだから。
俺達が結ばれるのは……そう、合併という名の結婚のみだ。
そして今、ヤツは赤い帝王の恋人。
恋人にすらなれない。
手が出せるわけがない。
あの響を抱く太い腕を払って奪うなど、出来るわけがない。
いくら好きでも、いくら抱きたくても、響は手に入らない。

あの日。

俺が先輩達の企みを告白して、いや響を助けたのが俺なら運命は変わっていただろうか。
しかし何度考えても、俺が保身を捨てて響を助けるわけがない。
俺とコカでは力の差がありすぎる。
そう、何度同じ事が起きても俺は響を助けられなかったんだ。
絶望的な過去と灰色の未来。
出会った時から俺達が結ばれないのは決定付けられていた。
「……何を見ているんですか?」
伊藤君が警戒した声で言う。
「名波を見ていた。
……夢の中では俺に腰を振って喘いでいたのにな」
リアルでは遠い。遠すぎる。
「夢で良かったです。三鳥井さんみたいなプレイボーイが相手じゃ、名波さんが可哀想ですよ」
「おいおい、取引先と寝る数じゃ、コカの方が多いぞ」
無邪気な青年がむっとした顔をする。なんとも可愛い。
「でも……コカさんの方が誠実そうです」
「俺には誠実さがないってか?」
「あるようには見えませんね。そもそも先程、あんな酷い事を名波さんにしたくせに。
僕、この屈辱、一生忘れませんからね」
可愛い顔が、すっと真顔になる。
「そんなに嫌わないでくれよ」
「嫌われるような事をしたのは三鳥井さんです」
「そんな起こった顔も可愛いな、君は。
そういう表情、お兄さんによく似てる。
伊藤君もお兄さんみたいに感じやすいの?」
次の瞬間、枕がばふっと俺の顔面に飛んできた。
「最低」
枕の向こうから聞こえてくる険悪な声。
俺はあははと笑った。
好かれないなら、嫌われてもいい。
でも好かれたい。
名波響に。

<終り>
20121231
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2012年09月04日

【ハードBL小説】ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇20120904

夜中の伊藤君と円先輩
【ハードBL小説】ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇20120903


続き

三鳥井寿はふと目が覚めた。
薄闇の中、豪華なシャンデリアが浮かんでいる。
コカの別荘か……。
近くに手が出せない響がいる。
憧れの円青樹がいる。

むくりと起き上がり、寿はトイレへと向かった。
もやもやした性欲と尿意が混ざり合う。
無駄に豪華なトイレで用を足しながら、寿はオナニーをしようか考えた。

オナニーするぐらいならいっそサンガでも犯した方がましじゃねーか?
……しかし面倒そうだしな。

寿は手を洗い、鏡の前で髪を整えた。

その時。

入口が開く。

入って来た人物を見て、寿は目を疑った。
名波響がそこにいた。

「あ……」
響が寿に驚き、声を漏らす。そして少しむっとして寿の後ろを通り過ぎようとした。

寿は即座に響の後ろを取り、パジャマを力尽くで引っ張り両腕を背中に固定した。
そして鏡台へと押し倒す。
「あうっ!」
椅子に白い胸をぶつけ、響は声を上げた。
「な、何をするんだ、寿!」
「わかってんだろ? 今からお前が何されるか」
寿はぐっと響のズボンをずり下げた。
すべすべした尻の谷間に咲く薔薇。
コカが示した愛のアナルプラグ。
「鬱陶しい」
「ひっ!」
寿は強引に薔薇を引き抜き、床に放った。
ぬるっとしたローションが漏れ出てくる。
「や……やめて……寿……もうこれ以上、嫌いにさせないで」
「俺を好きになるか? 俺の恋人になるか? 響」
「……なるわけないだろ」
「じゃあ嫌われても一緒だ」
寿は響の濡れた尻にペニスを押しつけ、二度、三度と滑らせた。
興奮し、勃起するペニス。
ピンク色に輝く響のアナルに、熱いペニスをあてる。

ふと寿は響を見た。
押さえている細い腰からすっと目を上げる。
ピンク色に輝いているすべすべした尻にはホクロ一つない。
パジャマで縛った手が動く。そこから伸びる滑らかな腕。
愛らしくすっと伸びた背中。
美しいうなじ。
そして涙に濡れる響の瞳。寿を睨みながらも哀愁を漂わせる。
美しい男達が鏡に映る。二重のSEX。

ああ、この麗しい男はジョンのモノなのだ、と寿はふと思う。

それなのになぜ響は愛らしい誘うような目で俺を見るんだ。
抱いてくれと、嫌だけど抱いてくれとせがむような瞳。
涙がこぼれてきそうだ。

響の瞳から。

俺の瞳から。

学生時代、あのちょっとした勇気がなかった時代。
もし響と寝ていたら、運命は変わっていただろうか。

いや、何度生まれ変わっても俺は三鳥井寿で、こいつは名波響で。
俺が学生時代、響に手を出す事も、響が俺を誘う事もないだろう。

俺達はライバル会社の子息なのだから。
俺は理性を失うような子供じゃなかった。
でも今は理性を失っている。
大人だから。
もう大人だから。

響の腰をぐっと押さえる。
逃げられないように。

俺のモノになるように。

「や……やめろ……」
か細く声を漏らす響。
その嫌がる声すらも愛らしく聞こえる。
俺は理性の箍(たが)を外し、響のアナルへと自分のペニスを挿入した。
「いやああああああああああああああ!!!」
麗しく悲しい声がトイレに響き渡る。

ああ、なんて美しい声なのだろう。

逃げようとする響の腰を俺は離さなかった。
背中を捩ろうとする響を離さず、俺は奥まで一気に貫いた。
美しい背中が俺を誘う。
零れる涙が俺を狂わす。
柔らかく温かく、また蠢く響のアナルが俺を狂乱させる。
今まで味わった事のないような感触。

あのコカが調教した名器を寿は今、味わっていた。
「……は、はは、ははは、あははははははは!!! すげぇ! たまんねぇ!」
寿は狂ったかのように笑い始めた。
笑いが押さえきれない。
ぬるぬるした響の体に残るコカの残滓。
男に犯され、嬲られ、男が狂うよう調教されたアナル。

あのコカが手塩に掛けてそだてた男を寿は今、犯していた。

「いや! 嫌だ! もう抜いてくれ、寿! ダメ! 止めてくれ!」
「ダメって何が? コカ以外の男に犯されたのは初めてか?」
 響がびくっと体を震わせ、真っ青になって俯く。
「図星か。若葉君に手を出す男女を籠絡してきた響も、バックはコカだけの場所だったわけだ。
そうだよなぁ、あんな冷酷な顔をする響のアナルを犯そうなんて雑魚共には想像付かないだろうよ」
俺は腰を振った。パンパンといやらしい音がトイレに鳴り響く。

ああ、犯しているんだ。征服しているんだ。
俺が響を、コカの情夫を犯しているんだ。
全面戦争も厭わない。
この男を手に入れるためなら。
この愛らしい男を手に入れたい。
感じさせたい。
燃えさせたい。
俺に恋をさせたい。
響がコカを見るあの瞳が欲しい。
愛してると囁く声が欲しい。

寿は響のペニスを扱きながら素早く腰をピストンしていた。
「ガチガチじゃねぇか。ははっ、犯されながらチンポ勃起させる響ちゃん、気持ちよさそうだな」
「ふざけるな!」
「この淫乱男が。少しはサンガの気持ちが分かったか?」
「……っ」
「レイプはよくないぜ?」
「だったらお前も今すぐ止めろ!!」
「お前がイったらな。そんな締め付けんな。本当に淫らな体だな」

続く 2012/10/12
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2012年09月03日

【ハードBL小説】ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇20120903

夜中の伊藤君と円先輩
ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇


 饗宴後。

 三鳥井寿はベッドに横たわりながら、響の吐息を聞いていた。
 目をうっすらと開き、彼の姿を盗み見る。伊藤若葉の向こうに、コカの胸に抱かれながら響は眠っていた。
手を伸ばせば彼の髪に触れられる。あの柔らかい髪に。つい昼間まで触っていたはずなのに、今はやたらと遠く感じる。
こんなに夢中になるなんて思っていなかった。何人もの男や女を、いや性別を超越した者も俺は手玉に取って恋愛ゲームをしていた筈だ。恋? 馬鹿ばかしい。三鳥井寿が本気になるわけがない。そう、なれるわけがないのだ。
寿は自問自答をしながら響を見ていた。他の男なら奪ったに違いない。この世で一番手を出してはいけない男に執着を感じてしまった。
決して手を出してはいけない古河・C・ジョンの恋人・名波響に寿は堕ちた。

指が疼く。響のアナルが指に絡みついた感覚が忘れられない。
指が犯される。舐められ吸い込まれ、もっともっとと淫猥に絡みつく。初めてだった。何人ものアナルに触れたが指が犯される事はなかった。主導権はいつも寿にあった。響相手でも響をイカしたのは寿だった。

しかし。

寿はたった数秒間響のアナルに触れただけなのに、その感触に嵌まった。夢中になった。
もっとあれを。もっともっとと脳が叫ぶ。柔らかくうねる、そして力強く指を愛撫してくるアナル。
桃色に輝く肌。甘く切ないベルガモットの薫り。また二度と忘れられない響のイキ声。


 手を伸ばして響にキスをしたい。押さえ付けて胸をしゃぶってあの声を聞きたい。この手で口で、そしてペニスで響を犯したい。あの指に感じた快感がペニスに纏わりついたら……そう考えるだけで一気にジュニアが堅くなる。

くそっ!

心の中で呟き、寿はペニスに手をやった。ここで自慰をし、発射した日には希鈴に何を言われるか。

だが。

どうしても寿は忘れられなかった。あの神秘的なアナルの感触。響の美しい声色。イクときの表情。
そして。先程嫌みったらしく何度も見せ付けられた、コカに征服された響のイキ顔。
コカの手により感じて、幸福の絶頂にある響を何度も繰り返し見せられ、寿は敗北感に包まれていた。
お前は一生、こんな風に響をたのしませる事は出来ないだろう? そう言ってるコカの挑戦的な瞳。
そして響の後ろで息を荒げ、神のアナルを味わっているドリンク業界の帝王。
コカは何度も響の中で射精していた。
その度に響の感度は良くなり、最後は……見た事もない程色っぽく狂っていた。あの嬌声。
これから響は社会生活に戻れるのか? と一瞬心配になったぐらいだ。
帝王に愛され、抱かれ、狂わされ。しかし響は幸せそうに見えた。寿の手、ではなくコカの手によって幸福を感じて悦んでいた。


部屋の隅を照らす小さな灯りが華麗な者達を照らす。

このジュニアをどうしようか。

寿は上を向いてちらっとサンガの姿を横目で見る。
綺麗な顔立ち。さぞかしモテまくってきただろう。

でも萌えねぇんだよなぁ。

少女のようにも見えるこの青年を響はどうやって犯したのだろうか。
あのドリンク業界のパーティーがあった夜、サンガはホテルの一室に連れ込まれ童貞を奪われたという。

サンガにしてみれば若葉に恋をした瞬間、無理やり犯され初物を奪われたのだ。
やりきれない思いも、屈辱もあっただろう。
同情してやりたいとも思う。
そう、相手がこの響でなかったら。
今では同情どころか、このか細い青年に三鳥井寿とあろう者が嫉妬し、めちゃくちゃにしてやりたいと思ってしまう。

どうやって響の口を味わったのか。
どうやって響に愛撫されたのか。
響のベニスを受け入れたのか。


世界中のセレブ達が金を積んで抱きたがっている名波響。
コカの恋人というアクセサリー的な意味ではない。コカが夢中になっているその性技を堪能したいのだ。

特に有名なその舌使い。
フェラの技。

あの大富豪であるRですら求める幻のセックス。

それをまぁ、こんな細っこい男に惜しげもなく与えちゃうなんてな。響も罪作りな奴。

寿はふっと笑った。Rが知ったら嫉妬からサンガは明日にでも四肢を切断され、バンビの剥製のように壁へかけられかねない。

こいつが馬鹿みたく吹聴しないといいけど。

綺麗なサンガの顔を見ていても埓があかない。
大同と寝たら恋だの愛だのうるさそうだ。
希鈴、あさひ、れもんは後々面倒な事になりそうだ。

ちらっと円青樹を見る。

綺麗だぁ、と寿は頬を染める。

あぁ、この男に抱いてもらったりフ、フ、フ、フ、フェラをしてもらったら、もうその視線だけで達してしまいそうだ。
髪から潮な香りがする。ワイルドで漢らしい。

しかし彼の腕には極上の寝顔を浮かべる伊藤若葉がいた。

はぁ、と寿は小さく溜息を吐いた。


 全く。幸せそうに円さんに抱かれちゃって。

寿はふと若葉をじっとみた。

円さんが若葉君のフェラを妙に誉めていたな。

女神の舌をもつ女帝の孫である響と若葉。まさか、若葉も名波のようなフェラが出来るとか?
考えてみれば名波より、若葉のほうが味覚センスが抜群に良い。
もちろんコカに育てあげられた響にはまだ到達しないだろう。しかしこの先、円青樹が育てたら?

寿は若葉の寝顔を見ながらペニスに手を置いた。
格下だからと舐めているうちに、実は最高級の品質を持っていた猫達をコカと円に奪われた。

悔しい。

そう寿は思い、唇を噛む。
いつもこの二人に先を行かれる。三鳥井家に生まれたという驕りが、ビッグチャンスを二度も逃す結果を生む。


あの、響に初めて会ったホームパーティー。
「三鳥井君。こちらは名波響君だ。パーティーに初参加だそうだよ。同じ日本人同士仲良くしようではないか」
 コカに紹介された美しい少年。繊細で、抱き締めたら壊れてしまいそうな体。
名波、というと伊藤苑グループ女帝の息子か、と寿は思う。
響の可憐な雰囲気は全く母親に似ていなかった。
それよりも何故、同じ日系ドリンク会社の息子を、アメリカ資本である古河家の人間が俺に紹介するのか。
寿は顔には出さず、むっとした。もちろん自分が女帝の立場でも同じ事をしただろう。一番最初に、一番強い奴に挨拶するのは当然だ。だが何故、ジョンがこの少年を紹介して回っているのだ。
それは誰の目にも「古河・C・ジョンが響を気に入った」と映った。そしてそれは事実だった。
こんな小さな少年に……と、嫉妬や羨望が混じった視線が響に送られる。女帝はにっこりと笑いながら、響とジョンを見ていた。
「よろしく。俺は三鳥井寿。寿って呼んでくれ。仲良くしようぜ」
「はい。寿……さん。私の事は響とお呼びください」
ガキのくせにちゃんと教育が行き届いてやがる。
三鳥井はふっと笑った。


「希鈴君は?」
「もう大人気っスよ。ほらあの人混みの中心にいます」
「モテモテな子だものねぇ。希鈴君! ちょっといいかな?」
女王のように座り、人々を侍らしていた希鈴がむっとして立ち上がる。
「なによ。あたしを呼びつけるなんて。くだらない用事だったら怒るわよ」
この中で一番小さな子が、ピンヒールを履きやってきた。上目遣いでコカと三鳥井を睨む。
「ニューフェイスの名波響君だ。同じ日本人として仲良くやっていこう」
「はっ! ライバルの間違いでしょ? まったく。あたしは井上希鈴。響、あんた、こんな毒蛇みたいな男に騙されるんじゃないわよ。頭からぺろっと食べられちゃうんだからねっ!」
「希鈴君はきついなぁ」
「ジョン程じゃないわよ。何事かと思ったら美少年侍らせて自慢しに来るとか!」
希鈴は下から舐めるように響を見回した。
響は真っ赤になって硬直する。
「ふぅん。名波女帝の息子さんかぁ。ぜんっぜんお母様似じゃないのね。あのひょろっとした草食系のお父様にそっくり。女帝似だったらもっと仲良くしてあげるのに! まぁ、いいわ。何かあったらあたしを頼りなさい。この色恋しか頭にない二人よりは、的確なアドバイスをあげられるわよ。学校も一緒でしょ? 困った事があったらあたしに聞きなさい」
「名波響です。ありがとうございます、希鈴さん」
「希鈴でいいわよ。あんたより年上だけどぉ」
「え!? そうなんですか!?」
「……あんた、今、あたしの事、チビだって思ったでしょ?」
希鈴が怒りに震えながら響を見た。
「いいえ。あの……小さくってふわふわしててキラキラ輝いていて、愛らしいなぁって」
「小さいですってぇええええ!」
 希鈴はぽかんっと響の頭を叩いた。
「いたっ!」
「あたしのコト、チビって言ったら承知しないんだからね!」


あれから寿と響と希鈴は同じ学校という事もあり、よく顔を合わせていた。
ただ寿と響は同じドリンク業界の子供と言っても企業規模が違うため、ほんの少し距離があった。
響はすれ違う時、いつも希鈴とつるんでいる寿に微笑みかけ、挨拶をした。

だがそれは少し他人行儀な感じを寿は覚えた。

寿はいつも美しい少年に惹かれ、振り返りながらも、距離を縮められなかった。
付き合うにはちょっと遠い。かといってセフレとして付き合うには惹かれ過ぎている。
そんな距離感に悶々としながら、寿は響とつかず離れずな関係を保っていた。

「寮長の誕生日に響が呼ばれるそうだよ」
そんな噂が流れてきたのはあの事件の一週間前だった。
「へぇ。俺も二年前に呼ばれたぜ」
寿はランチを食べながら、無関心を装った。
「名波もやるよな。これでセレブグループの仲間入りだ」
「成績優秀だから、後々囲い込みたいと考えたのだろう」
「誰か響と寝た事ある?」
周囲がシンッとする。
「まさか響ってチェリー?」
寿の脈拍が上がる。
「いいんじゃねぇの。響のヤツ、あの先輩達の事、好いてるし」
馬鹿みたいな発言を寿はわざとする。

なんとなくそわそわする同窓生達。


「じゃあ寮長達が最初かぁ」
呑気な同級生の言葉。

寿の脈拍がさらに上がる。

「先に誰か食ってしまえば?」
「寮長にレジスタンス?」
「言い出しっぺのお前が食えよ」
「勘弁。俺、寮長達に睨まれたくない」
「そりゃそうだよな」
皆がどっと笑う。

あの白い肌。赤い唇が寮長達に蹂躙されるのか。
寿はふと寮長達のバースデーパーティーの事を思い出した。

まぁ、その時は寮長ではなかったが。

押さえつけられ、ベニスを舐めさせられ、乳首に、蕾に、手が伸びる。
何度も何人も幾度も翌日まで続いた饗宴。
別に嫌ではなかった。しかし何度も繰り返される快感に気が狂いそうになった。
しゃぶられ、しゃぶらされ、握って、握られ、入れられ、入れられ、ベニスが、バイブが、指が、舌が、エネマグラが快感を引き出す。

過去の自分がいつしか響の姿に変わる。

あの白い肌に先輩達の手が伸びて、押さえ付けられる。

キスをされ、舌を入れられ、服が一枚一枚脱げていく。

象牙のような麗しい背中。
先輩の手がズボンに触れる。
ベルトが外され、ズボンと下着が剥ぎ取られ、露わになる下半身。

白くて、ぷりっとした尻。

恥じらう響が後ろを振り返る。

足がゆっくりと広げられて……。

「な〜にズボン膨らませて想像してんだよ、寿」

同級生にからかわれ、俺はふっと笑った。

「響の奴を後ろから犯しているのを想像してた」
「ヒュー! レジスタンスやんのか?」
「まさか。アメリカの市場を失うよ。童貞なんてメンドイ男は先輩達にくれてやる。それからじっくり開発さ」
「やるねぇ」
「寿は響と同郷なんだろ? 日本人だよな」
「あぁ、だから手を出しにくくってな。でもバージンじゃなきゃ、適度に遊べるだろ」
「そりゃそうか。俺も響と寝ようかなぁ」
眼鏡君が笑いながら言う。
俺は怒りを抑えながら、言い放った。
「響と寝られるわけがないだろ? そんときゃ俺にメロメロさ」
そう俺が言うと皆がどっと笑った。
「自信家だな」
「きらいじゃないぜ」
俺は笑いながら部屋を出て、トイレへと向かった。

響の白い項が俺を捕らえて離さない。

あの尻を押さえて……奴のペニスを扱いて……唇で背中にいくつも痕を付けて……奴の蕾をゆっくりと犯す。

あの赤い唇から漏れる艶声を聞いてみたい。
どんな声をあいつは出すのか。
背中を反って、ケツを振って、俺への……愛を奏でながら……。

「はぁ……はぁ……は、はっ、あ、あっ……はぁ……あ、あ、あっ、っうっ!!」

俺は空想上の響を犯した。
白いスペルマは便器の中へと、散った。


あと数日で響は先輩達に犯される。
やつのチェリーは奪われる。

寿は表情を変えないまま、響の体を空想した。

俺は別にチェリーじゃなかったが、響は絶対にチェリーだ。
あの恥じらいと無防備さ。

寿は彼の肌を妄想しつつ道を歩いていた。

「あっ!」
「すまん!」
なんという偶然だろうか。

街に響が来ていた。それも俺にぶつかってくるなんて……運命?

「あ、三鳥井さん」
「俺の名前は三鳥井寿。寿と呼べ。俺はいつも響って呼んでるだろ?」

響が頬を染めて寿を見る。

……もしかして脈あり?

寿は響の顔をじっとみながら、そんな風に考えた。

「寿……君も買い物?」
「ああ、ペンを買いにきた。お前は?」
「先輩の誕生日プレゼントを探しにきたんです」


なんとなく寿はむっとする。
誕生日プレゼントを渡すのは当たり前なのだが、響が先輩に渡すのが気に入らなかった。
「寿君、良かったらプレゼントを一緒に探してくれないかな」
「いいぜ。ペンを買ったら暇だからな」
「じゃあその文房具店に行きましょう」
「ああ」

何これ、デートじゃねぇか?

寿は表情を変えないまま、心の中でニヤついた。
響が上目遣いで寿を見る。
「ありがとう」
……可愛い。
ヤバい、可愛い。
響を近くでまじまじと見た事がなかったが、めちゃくちゃ可愛い。
思った以上に可愛い。


長い睫とか、冷たそうでいて甘い瞳とか、柔らかそうな唇とか。
「なにか?」
そう言って響が上目遣いで寿を見る。

誘ってんのか!? わざとなのか!?
なんでそんなもの欲しそうな瞳で俺を見るんだ!
いや、ただ単に俺が格好良いからだろう。だから響も興奮しているに違いない。俺が今異様な程、ハイテンションなように、響もきっと。

寿はちらっと響の下半身を見る。

盛り上がりに欠けるな……。俺はビンビンだというのに。

「いや、お前、意外とタッパあるんだなと思ってさ」
「うん。最近、伸びてきたんだ」


にっこりと笑うその笑顔。
無防備に体を寄せてくる。
ペンを買ってから、文房具屋を見て回り、二人はあれやこれやと語りあい、最終的に先輩へのプレゼントをスタイリッシュなデザインのブックエンドにするのだった。

「ありがとう。寿…はセンスがいいなぁ。私だけだと見付けられなかったよ」
名前を呼びながら、響はちらっと寿の様子を見る。
企業規模的に響は寿を呼びつけには出来ない。
寿がにっと笑うと、響はほっとしたように微笑み返した。
「まぁな。俺、先輩方と仲もいいしさ。数年前誕生日会に呼ばれた事もある」
「そうなんだ。どんな風だった?」
そう訊く響の顔を寿はじっと見つめた。

朝まで乱交だったぜ。
お前も朝まで……。

そう寿は思いつつ響の体を見る。

いくな。

そう言いたい。

でも言えない。

熱い葛藤が寿の体を駆け巡る。


「買物も終わったし、ソフトクリームでも食べないか? 美味しい店を知っているんだ」
寿がそう言うと、響がくすくすと笑った。
「寿ってソフトクリームを食べるんだ」
「なんだよ。おかしいか?」
「イメージに合わない」
「お前が好きそうだと思ってな」
「……ん。私は……ソフトクリームが結構好きだ」
響は少し頬を染め、俯いた。
「子供っぽいかな?」
「いや? 俺は嫌いじゃないぜ。白くて甘くて、響みたいだ」
「なんだよ、それ」
響があはは、と笑った。

俺は普段、ソフトクリームを食べないがな。下心が無ければね。

寿がソフトクリームを買い、響に渡した。

「今日、付き合ってもらったから、俺のおごり」
「私の方こそ付き合っていただいたのに……でも遠慮しないでいただくよ。ありがとう」
「いやいや」
寿は椅子に座り、ソフトクリームを舐めながら響を見る。
響は両手でコーンを持ち、仔猫のようにペロペロとアイスを舐め始めた。

………………。
どうしたらいいんだよ、このキュートな姿!
写真を撮ったら怒るだろうなぁ。

暫く響の姿を見ていた寿は、ふっと彼に顔を近付けた。

「響」

寿に呼ばれ、一生懸命ソフトクリームを舐めていた響が顔を上げる。

その白磁のような頬に。

寿の唇が触れる。

そして舌が。

つぅーっと頬から口角へと流れる。

少年達の赤い唇が、ほんの少し、重なった。

響が驚き顔を真っ赤に染め、体を硬直させたまま寿を見つめていた。

一瞬。

それでいて長く感じる時。

二人は触れ合っていた。

唇をそっと、端だけ重ねていた。

まるで恋人同士のように。

寿がゆっくり唇を離し、極上の美しい笑顔を響に向ける。

「お前、ほっぺたにアイスが付いてたぞ」

響は真っ赤になったまま寿を見つめていた。
そして頬に手を置く。

「あ……。ありが……とう」
「ははは、意外と子供っぽいんだな」
「いや、普段はそんな事はないんだけど……街に出て緊張してたのかな」
「そうかもな」

やべぇ、あの唇、思った以上にぷくっとしてやがる。
こいつ男を誘うなぁ。

寿はにやにやする表情を全力で我慢しながら、クールなハンサムフェイスをしつつ、響を見つめていた。

あと数日でこいつの童貞は奪われるのか。

寿はふと、俺だけを見ていて欲しい、などと思ってしまった。
会社の規模的にも、響と一緒になる事は出来ない。
出来たとしてもそれは結婚ではなく、養子縁組になる。
仔猫のようにソフトクリームを一生懸命食べる響を寿はじっと見つめていた。

あと少しで、こいつは先輩達にやられて……下手したらセフレとしてキープされる。
そうしたらもう二度と手が出せない。

でも……そんな事がなくても俺はこいつに手が出せないではないか。
それが三鳥井寿として生まれて来た宿命だ。
会社の決議がなければ、結婚は出来ない。

寿はふっと悲しそうに笑い、ソフトクリームをぱくっと食べた。



その後、あの事件が起こって、翌日から響とコカが恋人同士だと噂されるようになったんだよな。
先輩達は傷害事件を起こしたとして、グループごと退学になったんだっけ。
コカが響を助けたと、噂になっていたな。

寿は赤い蒲団にくるまって、コカの腕に抱かれる響を覗き見ていた。
子供の頃の甘さが消えた端正な顔立ち。その淫乱さが全く伺えない清楚で真面目な雰囲気。
コカが大切そうに腕枕をして抱き締める。

たまに響はくんっと匂いを嗅ぎ、何かを探す。
ゆっくりと移動し、弟の伊藤若葉に近寄る。
若葉がくんっと匂いを嗅ぎ、円青樹の腕を降り、響へと向かおうとする。

それをコカと円が阻止し、ぐいっとお互いの胸へとパートナーを抱きかかえる。
すると美しい兄弟は、お互いのパートナーの匂いを嗅ぎ、安心の笑みを浮かべ深い眠りに落ちるのだった。

コカと円さんの敵は、最大級の兄弟愛だよなぁ。
寿は薄目で見ながら、心の中で笑った。

続く→ http://fujimashion.seesaa.net/article/290124096.html
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2012年02月11日

【百合 まどか☆マギカ】『百合の歯車 愛の輪廻』2011/02/11 第一回 まどか×ほむら

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魔法少女まどか☆マギカ
【百合 まどか☆マギカ】『百合の歯車 愛の輪廻』
藤間紫苑 著


「私、鹿目まどか(かなめ まどか)。まどかって呼んで」
 そんな風に私に語りかけてくれた保健係の女の子。優しい笑顔で私を包む。
 初めて出来た友達?
 この娘となら仲良く出来るかもしれない。
 私は真っ赤になって俯いた。
「ここが保健室だよ、ほむらちゃん」
 しかし彼女が開いた扉は、地獄の門だった。


「だあれ?」
 白いカーテンの向こうにベッドがある。
 くちゃ、ぺちゃという何かを舐めるような音がする。
「マミさん、転校生が来ましたよ!
 暁美ほむら(あけみ ほむら)ちゃんって言うの。
 心臓が弱いから、助けてあげようと思ったんです」
「優しいわね、鹿目さん」
「さ、ほむらちゃん、横になって」
 私はまどかの笑顔に惹き付けられた。
 とても弱い心臓が、とくんっと高鳴る。
 こんなこと、初めて。
 私はベッドに横になって、まどかを見た。
 微笑む愛らしい少女。
 ぺちゃ、ぺちゃっという音が少女の後ろから聞こえてきた。何か食べているのだろうか。
「マミさん、お願いします」
「分ったわ、鹿目さん」
 その時。ベッドの横からしゅるしゅるしゅるっと金色のリボンが伸びてきた。
 綺麗……。
 こんな美しい演出を二人は私のためにしてくれたのだろうか?
 そのリボンはくるくるくるくると円を描きながら私の四肢に纏(まと)わり付いた。
「……え?」
 いつの間にか私の四肢は押さえ込まれ、身動きが出来なくなっていた。
 カーテンがシャっと開く。
 金髪巻き毛の美少女がベッドの端に座っている。そしてそのスカートはめくり上がり、股の間に水色の髪をした少女が後ろ手に縛られ裸のまま床に座っていた。
 ぺちゃ、ぺちゃ……。
 音は金髪美少女の股から聞こえてきていた。
「……美樹さん。そこ、もっと上手に舐めなさい」
「はい、マミさん」
「ああ……そうよ、上手くなったわね……」
 私は声も出せず、その光景を見ていた。
「ほむらちゃん。あたしがとーっても気持ち良くしてあげる」
 まどかは私の上に乗り、さっきと変わらぬ笑みを浮かべていた。
 声が出ない。
「あたし達はね、魔法少女なんだよ。ひとつの願い事と引き替えに、力を手に入れられるの。そしてね、あたし達の使命は魔女を倒すこと」
 まどかが私にキスをする。

 ――柔らかい……。

 初めてのキス。ファーストキス。
 これって恋人とするんじゃないの?
 じゃあまどかは恋人なの?
 分らない。
 じゃあ嫌いなの?
 嫌い……じゃない。
 私はじっとまどかを見た。瞳を閉じて、そっと優しく、私を包み込むようにキスをするまどか。ふんわりとした感触が唇に広がる。マシュマロみたいな味がする。甘くてふわふわしていて夢のよう。
 金色のリボンが制服に絡み付く。服の隙間から入ってくる。ちょっとくすぐったい。
 私の体が金色の光に包まれる。
「なんでも願いは叶うんだよ。ほむらちゃんも元気になれるんだ」
「……本当?」
「本当だよ。もう心臓が痛くなることはなくなるの。ね、マミさん」
「仲間になって一緒に闘いましょう、暁美さん。そうすれば健康な体を手に入れられるのよ」
「そんな魔法みたいなことが……」
「だってあたし達は魔法少女だもの。このリボンもマミさんの魔法だよ」
「そうよ。それでね、こんな風に使えるの」
 次の瞬間、私の制服も下着も、一気に破かれた。
「あああっ!?」
「ほむらちゃん、可愛い。あ、もう胸が膨らんできているんだね。あたしより大きい」
 はだけた胸にまどかが、ちゅっとキスをする。
「ねぇ、ほむらちゃん、知ってる? 胸ってね、キスをすると気持ちがいいんだよ」
 体の上に乗り、私を見上げるまどかの瞳はまるで魔女のように妖しく輝いていた。


 四肢を押さえているリボンが蠢き、耳の後ろをくすぐる。
 束になった金色に輝く棒が私の口へと入ってくる。
「むぐっ!」
「マミさん、あまり口を塞がないでね。ほむらちゃんの声が聞けなくなっちゃう」
「あら、ごめんなさいね」
 金色の棒は細かく別れ、細い蔓の様になった。
 まどかはベッドから降りて、戸棚の中に入っているベビーオイルを取ってきた。
「知ってる? ほむらちゃん。これを塗るとすんごく気持ちがいいんだよ」
 まどかが蓋を開け、オイルをたらりと私の全身に塗る。
 そして金色のリボンが、蔓が、まどかの指が私の体に触れた。
「……あっ!?」
 くすぐったかった筈の感触が、なにかぴりっとしたものに変わった。

 心臓がとくんとくんっと、打つ。

 まどかの指が乳首に触れる。
「ああっ!」
 私は体をぴくんっと震わせ、体を捩った。
 妙な感覚が全身に広がる。心臓がどくんっと波打つ。背筋が凍るような恐怖。
 そしてなにか不思議な感覚。甘く、切なく、股の辺りが熱くなるような淫靡な痺れ。
「感度良好だね♪」
「暁美さんはいい魔法少女になりそうね」
「ほら、ほむらちゃん。乳首がこんなに勃ってきたよ。沢山舐めてあげる」
「いやぁ! まどかちゃん! なんか変、なんか変なの!
 そこを舐めるとドキドキしちゃうの! 止めて!」
「ほむらちゃん。それが気持ちいいってことだよ」
「…………気持ち……いい?」
「そう。これがセックス……」
「セックス?」
「あたしとほむらちゃんは、今、セックスしているんだよ。
 だから気持ちいいの。
 心臓が痛くなったら言ってね。魔法少女になる契約をすれば治るからね」
「心臓病が治る?」
「そう。治るの。それでね、あたし達はずーっと気持ちいいことが出来るんだよ」
 まどかが、かりっと私の乳首を甘噛みした。
「あうっ!」
 私は体をびくんっと跳ねさせた。

つづく

 2012/02/11

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2012年02月01日

【百合小説】濡れる夜

濡れる夜

 なんとなく落ち込んで。
 そんな日に限って雨で。

 私は新宿二丁目のガールズバーで酒を引っかけてから、ふらふらとどしゃぶりの雨の中を歩いていた。
 疲れた。
 人生に、恋に、仕事に。
 ゆっくりと壁にもたれかかり、汚れた道端に座る。
 体が段々と冷たくなっていく。
 酒を飲んだ後に雨に濡れる。
 自分の命を賭けに使うロシアンルーレット。
 ここで友達に会えば私は助かる。
 誰にも会わなければ冷たくなって死ぬかもしれない。
 誰か助けてと思いながら、誰も助けてくれず静かに死にたいと望む。
 他人任せな卑怯な選択。卑怯な人生。
 でもそんなバッドエンドもいいじゃないか。誰にも会えない人生なんて。
 終わってしまえ。

「きったねぇ、ネコだな」

 そんな日に限って、ダチじゃなくってイケタチ様が目の前に立っている。夢じゃない。
「こいよ」
 名前も名乗らないイケタチ様に私は拾われた。
 仕事帰りの、勝負パンツじゃないずぶ濡れな日に幸福はやってくる。いやこれ、不幸なんじゃないの? 今日のパンツは……何を穿いてたっけ?
「立ってきちんと歩け。ほらこっち」
 腕を掴まれ無理矢理立たされ歩かされる。ぐいぐいと引っ張られて、どこかに向かわされる。
 足がもつれる。
 体が思っていた以上に冷たい。
 私の命はイケタチ様に救われた。

 スーツのままシャワーを浴びせられた。いくらなんでも最悪だ。
 バスタブに座りながら、イケタチ様を睨む。いやこの女、顔はいいけど性格は最低だろ。いくら雨に濡れてたって、普通、服ごと風呂に突っ込むか? 様とか抜き抜き。
 シティホテルのダブルを取ってもらった時は幸せ一杯の気持ちだったが、部屋に入ったらいきなり風呂へと突っ込まれた。そしてイケタチはちゃっかり服を脱いでバスローブを着ている。
 バスローブからこぼれ落ちそうな胸。これはもしや巨乳ってやつ? どうやってあのジャケットに収っていたのだろうか。普通はもっとこう、ジャケットが着崩れるような気がする。体にジャストフィットした服を着ているってことか。
「服のドロを落としたら、服を簡単に洗って脱げよ」
 あ、シャワーに突っ込まれたのは私が泥だらけだったからですか。さいですか。私は慌ててスーツに付いた泥を落とした。本当だ。ズボンも背中も泥だらけ。
 ジャケットやズボンを脱いで、ごしごし洗う。下着はユニクロのボクサーパンツだった。高校生のようなガキっぽさ。このパンツでイケタチ……私は彼女をちらっと見る……様と豪華なダブルルームに入ったのか。誰か今すぐ私を殺して。
 彼女は私から洗い終わったスーツを奪うとよく絞って伸ばして、干した。
 名前も知らない私達。そんな私のスーツを丁寧に干していく彼女。
 彼女の名前を知りたいと思った。
「ルイ……僕の名前はルイ」
 彼女は私を見て、くすっと笑う。
「ずぶ濡れネコが人語をしゃべった。俺は朝霧」
 えーと、おっぱいでっかいイケタチ様の一人称は俺ですか。そうですか。ピンヒールで蹴ってきそうなイメージなのに、俺。ちょっと驚いた。
「明日も仕事だ。さっさと脱いで体を洗え。エッチする時間がなくなるだろ?」
 ホテルに入ったんだからヤルことはそれだよな。私は少し興奮しながら、体を洗った。

 シャワーを浴び終わると、裸のまま手を引っ張られ、ベッドに放り投げられた。
 すっごいゴージャスなキングサイズのベッドが目の前にある。
 俯せになってベッドをさすっていると、イケタチ様……もとい朝霧が上から被さってくる。
 イヤミなぐらいの巨乳が背中に当たる。
「泥を落としたら意外と可愛いじゃないか。ちょっとスレンダー過ぎかな」
 ふと気付くと体が押さえ付けられていて動けない。
 うなじに舌が触れる。ぬるっとした感触。
「朝霧はシャワー浴びないのか?」
「後で浴びる。腕だけは肘まで洗ったから大丈夫」
「どこまで入れるつもりなんだよ」
「どこまで入れられたい?」
 朝霧がくくっと笑った。
「あんたタチなんだ」
「ああ。ルイは?」
「リバ」
「ふうん……リバには見えないけどな。運命に捨てられた仔猫ちゃん」
「あっ……」
 舌がうなじから、つつつっと背中へと流れる。
「朝霧の顔が見たい」
「お前に決定権はない。後で見せてやる。腰を上げろ」
 何故か朝霧の命令口調にゾクゾクする。
「あのさ、僕、どっちかっていうとタチ寄りなんですけど……」
 一応、朝霧にお断りを入れてみた。ナンパは自分から。リードも自分からの私が何故ここでリードされているのだろう。
「俺の前ではネコだから安心しろ。タチは命令されて腰を上げたりしないんだよ」
 朝霧は高く上げた私の腰をぱしっとひっぱたいた。
「っ……!」
「ん。感度はいいな。M度高しと」
「Mってなんだよ。誰がMだ」
「ケツ引っ叩かれて濡れる女の事だよ」
「あっ!」
 朝霧の指がヴァギナをつーっとなぞる。
 そして指を私の目の前に出した。てらてらと濡れる指。
「自分がMだって知らなかったのか? 人生の早くに気付いてラッキーだったな」
「知るかよ! ベッドではむしろSで通ってる」
「あはは、にゃーにゃー鳴く自称Sのネコか。可愛いな」
「自称ってなぁ! あっ……!」
 両胸を後ろから触れられる。と同時に朝霧の胸が背中に当たる。むにゅーっと。
 胸を揉まれる。胸が当たる。この挟まれた快感が私を襲う。もみむにゅ、もみむにゅ、もみむにゅ。
 女の胸に反応するレズビアンの悲しい性なのか。私の乳首は嫌って程、勃っていた。
「はぁ……はぁ……」
 自分の呼吸音の向こうに、彼女の呼吸音が聞こえる。興奮した息。速まる呼吸。女同士のセックス。とてもとてもとーっても久しぶりのセックス。
 人肌が恋しかった。前のカノジョの捨て台詞が脳裏に浮かぶ。
『このドブネズミ!』
 ははっ、本当にドブネズミみたいだった所を、イケタチ様に拾われましたよーっと。
 セックスしながらベッドサイドを見る。淡い間接照明が部屋を照らす。いつの間にかムーディーな空間に変わっていた。朝霧は見目だけじゃなくてセンスもいい。意識があまりなかったのだが、このホテルはどこなのだろう。広い部屋と大きなベッド。いつも泊まる安ホテルじゃない事だけは確かだ。
 カーテン全開の窓から満月が見える。冷たくて美しい。朝霧みたいだ。
「はうっ!」
「余所見する暇があるなら、もっと虐める」
 胸がぎゅううううっと搾られる。乳首がきゅうううぅっと抓られる。
 本当に、冷たい。
 痛い。
 そして気持ちいい。
 微妙な気持ちが交差する。
「あ、あっ、胸、が……っ!」
「イヤらしい娘だな。乳首がどんどん硬くなっていく。ほら、こんなに」
「ひゃああっん!」
 乳首の先端に爪が食い込む。
「かんじ……る!」
「やっぱりMだ」
「ち、違う! 僕はMなんかじゃない!」
「こんなに抓られて感じまくって腰を振ってて、Mじゃないとか言われてもね」
 朝霧が私の尻をパァンっと叩く。
「やだ!」
「濡れてるのに? 認めろよ、Mだって」
 パァン、パン、パパンと部屋に鳴り響く音。おと。
 羞恥心が刺激される。恥ずかしさのせいか、痛みのせいか、気持ち良いせいか、顔が火照る。
 ヴァギナの近くを叩かれる。
「ひゃん!」
「ヌレヌレだな。濡れネコはいやらしかったのか」
「いやらしくなんて……ない!」
「スパンキングでこんなに感じているのにか?」
 くすくすっと朝霧が笑う。
 お尻を撫でていた指先が、ゆっくりとヴァギナへ寄る。
 ごくりっと唾を飲み込んでしまう私。音が響いただろうか。恥ずかしい。
「おまたせ、仔猫ちゃん」
 指はヴァギナに少し、触れる。
 しかし濡れた襞(ひだ)を通過して、クリトリスを弾く。
「ひぃあん!」
 馬鹿みたいに感じてしまう。
 朝霧は恋人じゃないんだと頭に言い聞かせる。彼女が凄く格好良くても、所詮はワンナイトな相手。
 柔らかな枕。真っ白なシーツ。でも私は知っている。私はこんなホテルに泊まったりしない。もっと狭くて、安くて、壁は薄くて。声を出したら隣に聞こえる、いや隣の声も聞こえてくるようなホテルにしか泊まらない。
 格好良い人と付き合うには金が掛かり、そのような収入はないわけで。だから朝霧と寝るのは今夜だけの夢。毎回こんなホテルを割り勘していたら破産してしまう。
 好きになってはいけないと、自分の心に言い聞かせる。でも朝霧は的確に私の急所を狙ってくる。夢中になれと。セックスに。
 夢中になる恋の向こうになんて、何もない。これは人生の教訓。
 だから私は夢中になんて、ならない。
 後ろから触っていた指を離し、朝霧はつうっと腰に指を走らせクリトリスに触れた。胸を揉まれ、クリトリスを弄られ、体はぴったりと重なりながら私達は交じり合う。
「は……っ! あっ、はうっ、ああっ」
 心とは裏腹に体は朝霧のテクニックに反応し、声が出てしまう。恥ずかしい。
 ぬる、ぬる、ぬるるんと滑る指先。
 もにゅ、もにゅ、ぷるん、もにゅ、きゅい、きゅきゅっと胸を弄る手。
 背中に朝霧の胸が触れる。興奮した乳首が私の背中を弄ぶ。
 やだ、こんな体勢でイッちゃいそうだ。正常位が好きな筈なのに、お尻を高く上げたままイッちゃいそう。こんな体位でイクなんて初めてだ。
 にゅるにゅるにゅるにゅると、指が滑る。クリトリスを挟む二本の指が私を……!
「あ……ああっ!」
 胸をぱぁん! と叩かれた。
「イク時はイクと言え」
「イクッ! イク! イッちゃってる! もう……もう、もうダメ! イクッ!!」
 ダメとか止めてとかお願いとかいう言葉は全て無視された。
 私は強引に、そう強引に何度も何度もイカされた。
 イクッ! という自分の声が耳から離れない。恥ずかしい。
 でもきっとこの部屋は壁が厚くて、私の喘ぎ声が隣に聞こえない。
 幸せな時間。
 涙が出る程。

 でも夜が明ければ、また辛い毎日が待っている。

 ★

「始発の時間だね。もう行くよ。今日は本当にありがとう」
「こちらこそ楽しませてもらったよ。朝日の中の仔猫ちゃんっていうのもいいもんだな」
「それはこっちの台詞。朝霧、格好良いし……恋人はいるのか? っているよなぁ」
「いたらずぶ濡れの猫なんて拾わないよ」
 期待しちゃダメだ。
「そう」
「お前は?」
 期待しちゃダメ。
「前カノと別れてずいぶんになる。それから友達はいるけど、カノジョはいない」
「じゃあ拾ってやろうか、仔猫ちゃん」
「拾うって何を」
「ルイを」
「私を?」
「恋人になってやろうかって言ってるんだよ」
「どこまでも上から目線な女だな〜。……恋人になってやってもいいぜ」
「あははは、そんな台詞を初めて言われた。お前はやっぱり面白い」
 朝霧が笑いながら巨乳を押しつけてくる。やっぱりムカツク。
「それ……サイズいくつ?」
「ん? 胸か? Fカップ」
「でっか! 少し分けろよ」
「ルイはCカップだろ」
「なんで知ってるんだよ」
「ブラジャーで確認した。底上げカップ付きのC」
「うるせー。乳寄越せ」
「あはは、止めろ、触るな」
 私達はベッドの中でスマートフォンの名刺交換をした。
「始発だ。ルイ、また週末に会おう」
 朝霧が私の髪にキスをする。
 私は朝霧の唇にちゅっとキスをした。
 朝霧は少し考え、私の頭を掴むと唇を押しつけてきた。
「んーーーーーっ!!」
 舌が無理矢理割り込んでくる。激しすぎて興奮する。朝日が私達を見ているのに。

 一晩で落ちる恋なんてあるんだろうか。

 私は目を瞑り、激流のようなカノジョの愛欲を受け止めるのだった。

<終>


2012/09/26 つっちーへ お見舞いエロ小説。
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2010年03月24日

夢見女館

 ―― 新宿御苑の桜の樹の下に、夢見女館はあるのよ……。
 こう言って、母は息を引き取った。
 母の葬式や墓地の手続きを終え、広く、静かになった家を見回した時、私は、ふと、この言葉を思い出した。夢見女館。アドレス帳の一つも見付からなかった母だが、もしかしたら友人かなにかがその店を経営していたのかもしれない。部屋の時計は二十一時を指していた。私は咄嗟にコートを掴み、家を出た。
 地下鉄丸の内線新宿御苑前駅で私は下車し、新宿御苑へと向かった。私の勤め先は新宿にあったが、入社して以来十年間、私は一度も新宿御苑に来たことが無かった。土曜日の新宿周辺とは思えないほど辺りは暗く、人通りが無かった。私は新宿御苑の安っぽい門をくぐった。
 門を入るとすぐに、白いスーツを着た壮年の女性に私は出会った。女性は月明かりに照らされた大きな桜の樹を見上げていた。桜には枝しか無かったが、彼女のスーツは桜色に彩られていた。私は何故か、スーツが桜色に染まっているのは月明かりが桜の枝を照らしたせいだろう、と意味付けた。
「すみません、お尋ねします。この辺りに『夢見女館』というお店はございませんか。」
「夢見女館でしたら …… ほら、あの樹の下です。」
「ありがとうございます。」
 私は女性に礼をして、彼女が指した樹の下の明かりの方へと向かった。
 古い煉瓦造りの建物には『夢見女館』という木の看板が掛かっていた。カウ・ベルの下がった扉を開くと、赤に近いピンクのロングドレスを着た女性が立っていた。いらっしゃいませ、と言われ、初めて私はこの美しい女性が、夢見女館の店員である事に気付いた。きっちりと化粧されている顔、下着を着けていないのに形の崩れていない胸、嘘みたいにくびれたウェスト、同性である私が頬を染めてしまいそうな容姿であった(彼女が美しいから? それども自分が彼女に劣っているから?)。
「貴女はどんな夢を見に来たのかしら …… ああ、もしかして、瑞江さんの娘さん?」
「はい、幸子(ゆきこ)といいます。先日、母は他界しまして、臨終間際にこの店の事を言ってましたので …… 母の知り合いがいればと思いまして。」
「瑞江さんはよくこの店にいらしていた、常連様でしたの。」
 私達は通路奥にあったドアをくぐった。店内には四、五人の女性がソファーに座って、各々、店員と思われる女性と親密に話し合っていた。どの女性も壮年以上の方ばかりで、中には若くは見えるが、八十近い女性もいた。
 私はふと、サイフの中身が気になった。あまり出掛けていると思えない母が通っていた店だから、と油断して、たいした金額を私は持っていなかった。私は店員に、平均、どのくらい値段が掛かるのかと聞いた。
「そうですわね …… 十万。うふふ、嘘ですわ。基本料金五千円でおしまい。私達がお客様に一人ずつ付き添い、お話しを聞いて、カクテル《夢見女館》を一杯のみお出しします。メニューはそれだけ。ただし、このお店の事を男性にお話ししたら、私達の事をお忘れになってしまいますから気を付けて下さいましね。」
 忘れてしまう、というのはどういう事なのだろう。私は疑問に思ったが、この店の暖かい雰囲気を壊したくなかったので、決して言わない、と彼女に伝えた。
 私達はカウンターに座った。バーテンがかわいらしいデザインのグラスに、竹の筒に保存されていた液体を注いで、私の前に出した。
「私の名前はサチ。私達夢見女館の者は、女性に夢を与えるのを生業としております。」
 私は出された紫色のカクテル「夢見女館」を口に含んだ。口に入ると液体はねばねばし、匂いがきつく、何かを思い出すような喉ごしを感じた。

  †

 頭がだるい。なんて強いカクテルだったのかしら。あら、ここはどこ? 横浜駅って、なんで私、こんな所へ …… 私、私……。
 私はふらふらと、引き寄せられるように東海道線に乗り込んだ。
 仕事に行かなきゃ。なんでこの車両はこんなに女性が多いのかしら。そう、私の前に立つこの人なんか、とってもいい匂い。臙脂色のパンツスーツ、細い首筋、私よりちょっと高い身長、広い肩幅、扉の窓に映った顔が色っぽくって、ワインレッドのルージュがとても似合っているわ。
 電車ががくんと揺れ、私は彼女の体をドアへと押しやった。私は右手で臙脂色のパンツのファスナーの辺りに触れていた。地獄のような混雑の中で、腕がどかせられる訳もなく、私は彼女の恥骨を手の甲に感じながら、電車に揺られていた。
 もし、この手で彼女の性器に触れたら、この人はどう思うのかしら。
 私は幼い頃から女性にいたずらする、という行為でオナニーを楽しんでいた。夢の中の女性達に私は愛され、私がいたずらすることで、夢の中の女性も喜んでいた。そんなに調子よくいくわけがない、と夢から醒めた私は思ったものだが、これは、それとは違う。なにせ現実なのだから。
 女が女にいたずらする。
 もし、会社などにばれたら即刻クビになるだろう。犯罪者とレズビアンのレッテルを貼られ、私は会社から追い出されるのだろう。私はそれを考えると背筋が寒くなった。
 しかし、しかし、しかし。
 私の欲望は罪悪感よりも膨らんでいった。私は自分の性器にしか触れたことがなかったので、彼女の性器が上手く想像出来なかった。臍から下につるつるした腹部があって、ふわふわした子犬のような毛が生えていて、毛に隠れて襞があり、そこに大事そうにクリトリスが眠っている。襞の中にはきっと温かい汁を出す穴が、私の指を待っているのだろう。
 そんな事はあるはずがない。
 私は彼女と重なりあっていた。私は自分の鼓動や体の震えが、彼女に伝わってしまうのではないか、と思った。電車が揺れると益々私達は交じりあい、足を絡ませていた。彼女は股を開き、そこに私の右手が当たっていた。私は手をぶるぶると震わせていた。他人の性器に触れてみたい。その考えで私の頭は一杯になった。
 私は右手首を曲げ、手の甲で彼女の股に触れた。私は手首をゆっくり動かし、彼女の性器の上を擦った。私と彼女の顔は隣同士にくっつき合っていたが、彼女は私の方を見たり、慌てるそぶりを見せなかった。彼女はただじっと、私とは逆の方向を見詰めていた。私の呼吸はしだいに荒くなっていった。彼女はどうもゆっくりと呼吸を整えている様子だった。
 私は何度も右手の甲で彼女の股に触れた。そして手の平を返し、中指でそっと、彼女の性器の上をなぞった。もう一度、中指でなぞった。今度は中指と人差し指でなぞった。奥から手前に、手前から奥に、私は彼女の性器の上を何度も弄った。彼女は私の方を一向に見ず、抵抗するそぶりも見せなかった。
 あっ。
 私は心の中で驚いた。彼女の股が次第に熱くなっていったのだ。彼女は私の指に感じているのだ。何故、この人は私を責めないのだ。早く、私の行為を責めて欲しい。私は自分で制御出来ない程、興奮していた。
 私達は電車が揺れる度に、強く重なり合っていった。私の右手は彼女のパンツの上から性器に触れていた。満員電車の中、私は自分の体温が上がるのを感じた。私は電車が揺れる度に少しづつ左手を挙げていった。そして私の胸と重なり合う、彼女のふくよかな胸に触れた。白いブラウスは、満員電車の中で温まっていた。私は大胆にも、彼女のブラウスのボタンを一つだけ外し、ブラジャーのフロントホックを外し、直接、胸に触れた。それと同時にパンツのファスナーに手を掛けた。
 もうそろそろ電車は川崎駅に着く頃だった。私は素早く彼女のショーツの中へと手を忍ばせ、繁みの向こうへと指をはわせた。彼女の繁みは思ったよりゴワゴワしていた。私は指をクリトリスへと当てた。クリトリスの皮は剥かれ、さくらんぼの種のような突起物が、繁みの中に隠れていた。私は急いで、またそおっと、その奥にある窪みを探した。襞を人差し指と薬指で開き、中指でふにふにした穴に触れると、温かい体液が溢れ出てきた。
 こんなに濡れるなんて……。信じられないわ。
 私は彼女程、濡れた事は無かった。私は指に彼女の体液を絡ませ、手前に指を動かした。私が指を、彼女の体内と、突起物の上を行ったり来りさせると、彼女は股の筋肉に力を込めた。その為、私は指を彼女の肉に挟まれた。私は、ああ、指が愛撫されている、と思った。彼女は股を閉じようとしたが、私の足に邪魔され、私の手を止める事が出来なかった。彼女の手はやや上の方へ挙がっており、満員電車の中、その手を下げる事は出来なかった(いや、少しづづならば出来たのだろうが、彼女は下ろす事をしなかった)。私の濡れた指が突起物に触れる度、彼女は体を強張らせた。
 一方、私は左手で彼女の胸を弄った。私の指の動きは、私の体でも感じられた。私は両腕で彼女の体を隠すようにして、彼女の胸に触れていた。混んでいるので、それ程、左手は動かせなかった。私は中指と薬指で彼女の乳首を挟み、指をこすらせた。また、中指で乳首を胸の膨らみの中へと沈ませたりした。
 あっ、滑りが良くなってきた。
 私は右手で、河の様な彼女の性器に触れ、上ったり下ったりしていた。次第に彼女の体は小刻みに震え、吐息が聞こえてくるようになった。
 その時、駅到着のアナウンスが車内に響き渡った。私は慌てて手を引っ込めて、彼女のファスナー、ホック、ボタンを元どおりにした。
 アナウンスで私の情欲は一気に冷め、恐怖心だけが頭を支配した。私は彼女の顔を少しだけ覗き込んだ。改めて見ると、誰かを思い出すような顔付きだった。彼女は私の方は見ず、ただ潤んだ瞳で宙を見詰めていた。
 私は罪悪感にさいなまれていた。彼女は何故、大声を出さなかったのだろう。それともこれから私の腕を*んで、駅員に引き渡すつもりなのかしら。いつも夢見ていたファンタジーが、これ程の恐怖と絶望で終わるなんて……。私は唇を噛んだ。それと同時に車両の扉が開かれた。しかし降りる人は少なく、それ以上の人達が車内になだれ込んできた。
 彼女は私を駅員に引き渡さなかった。私は社会的信用を失う事へ恐怖を感じていたが、彼女の体の熱さを忘れられず、同じ場所に佇んでいた。彼女もまた、私の腕の中から出て行く事をしなかった。
 電車が発車してすぐに、私は再び彼女のファスナーを下ろし、ボタンとホックを外した。彼女はさっきよりもやや俯き加減で立っていた。
 ああ、本当に女の体内って熱いんだ。私は右手の人差し指と中指で、彼女の体内に潜り込みながらそう思った。親指を使って彼女の突起物を刺激しながら、指を穴から出したり入れたりしていた。私は頭の一方で、もう確実に犯罪者の仲間入りだ、と思い、会社を首になるとどういう不利益があるのか考えた。家賃も公共料金も払えなくなる。住所が無くなり ……? その後はどうやって暮らせばよいのだろう。私の想像力ではそこまでが限界だった。
 彼女の体は、私に社会的信用を失ってもいいと思わせる程、魅力的だった。私の行動は明らかに狂っていた(同性に興奮する事が? それとも電車の中でいたずらするという行為が?)。
 私は狂っている。私ハ彼女ニ発情スル。
 私は狂っている。私ハ彼女ノ性器ニ触レ、性的興奮ヲ覚エテイル。
 私は狂っている。私ハ満員電車ノ中デ、彼女ニイタズラシテイル。
 私は狂っている。私ハ犯罪者ダ。
 私は狂っている。私は狂っている。私は狂っている。私は狂っている。私は……。
 その時、私の右手をとても冷たい手が*んだ。
 私は息を詰まらせた。

  †

「どうかなさいました? 顔色がすぐれませんわ。」
 瞬きをすると、私はうす暗い店のカウンター席にいた。私は右手の上に乗っている氷のように冷たい手を払いのけた。その手がサチのものだと分かると、私は体を激しく震わせた。私は店内を見渡し、時計を見た。十一時五分。一体、いつ私はこの店に来たのだろうか。もしかしてもう、警察に追われる身で、この店に匿ってもらっているのではないだろうか。私は下着が冷たく感じる程、冷や汗をかいた。
「ご、御免なさい。私……。」
「どうなさいましたの? 悪夢でも見てらしたの?」
 確かに悪夢 ……、いや、現実だ。手の感触、体の感触、夢の筈がない。私はもう一度時計を見た。時計の日付は、初めて夢見女館に来た夜を指していた。
「私、何か口走っていませんでした?」
「いいえ。」
 本当に夢だったのだろうか。私は心の中にある恥ずかしい欲望をサチに見られたのではないかと戸惑った。欲望。そうだ、私は女の人にしか感じない体だったのだ。何故、忘れてしまっていたのだろう。仕事に追われているうちに、一人で生きようと思った理由を忘れてしまっていただなんて。
「私、今夜はこれで失礼します。」
「またいらして下さいね。」
 サチは私にコートを着させた。私は会計を済ませた。サチは小声で呪文のように囁いた。
「決して男性に言ってはいけません。」
「ええ、分かっています。」
 サチは廊下で、私にキスをした。私はサチの唾を飲んだ。サチの唾はカクテル《夢見女館》の味に似ていた。
 夢見女館の外に出ると、とても寒く、改めて電車の中の行為が夢だったと、私は確信したのだった。夢の中のホームはちっとも寒くなかったからだ。そういえばショルダーバックすら持っていなかった。車内に女性が多い、というのもあり得なかった。
 あっ。
 新宿御苑の門の近くまで来て、臙脂色のスーツを着た女性が母の若い頃の姿にそっくりだった事を、私は思い出すのだった。 

<終>
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posted by Fujima at 14:59| Comment(0) | 百合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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