2012年09月03日

【ハードBL小説】ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇20120903

夜中の伊藤君と円先輩
ベルガモットに魅せられて〜三鳥井寿篇


 饗宴後。

 三鳥井寿はベッドに横たわりながら、響の吐息を聞いていた。
 目をうっすらと開き、彼の姿を盗み見る。伊藤若葉の向こうに、コカの胸に抱かれながら響は眠っていた。
手を伸ばせば彼の髪に触れられる。あの柔らかい髪に。つい昼間まで触っていたはずなのに、今はやたらと遠く感じる。
こんなに夢中になるなんて思っていなかった。何人もの男や女を、いや性別を超越した者も俺は手玉に取って恋愛ゲームをしていた筈だ。恋? 馬鹿ばかしい。三鳥井寿が本気になるわけがない。そう、なれるわけがないのだ。
寿は自問自答をしながら響を見ていた。他の男なら奪ったに違いない。この世で一番手を出してはいけない男に執着を感じてしまった。
決して手を出してはいけない古河・C・ジョンの恋人・名波響に寿は堕ちた。

指が疼く。響のアナルが指に絡みついた感覚が忘れられない。
指が犯される。舐められ吸い込まれ、もっともっとと淫猥に絡みつく。初めてだった。何人ものアナルに触れたが指が犯される事はなかった。主導権はいつも寿にあった。響相手でも響をイカしたのは寿だった。

しかし。

寿はたった数秒間響のアナルに触れただけなのに、その感触に嵌まった。夢中になった。
もっとあれを。もっともっとと脳が叫ぶ。柔らかくうねる、そして力強く指を愛撫してくるアナル。
桃色に輝く肌。甘く切ないベルガモットの薫り。また二度と忘れられない響のイキ声。


 手を伸ばして響にキスをしたい。押さえ付けて胸をしゃぶってあの声を聞きたい。この手で口で、そしてペニスで響を犯したい。あの指に感じた快感がペニスに纏わりついたら……そう考えるだけで一気にジュニアが堅くなる。

くそっ!

心の中で呟き、寿はペニスに手をやった。ここで自慰をし、発射した日には希鈴に何を言われるか。

だが。

どうしても寿は忘れられなかった。あの神秘的なアナルの感触。響の美しい声色。イクときの表情。
そして。先程嫌みったらしく何度も見せ付けられた、コカに征服された響のイキ顔。
コカの手により感じて、幸福の絶頂にある響を何度も繰り返し見せられ、寿は敗北感に包まれていた。
お前は一生、こんな風に響をたのしませる事は出来ないだろう? そう言ってるコカの挑戦的な瞳。
そして響の後ろで息を荒げ、神のアナルを味わっているドリンク業界の帝王。
コカは何度も響の中で射精していた。
その度に響の感度は良くなり、最後は……見た事もない程色っぽく狂っていた。あの嬌声。
これから響は社会生活に戻れるのか? と一瞬心配になったぐらいだ。
帝王に愛され、抱かれ、狂わされ。しかし響は幸せそうに見えた。寿の手、ではなくコカの手によって幸福を感じて悦んでいた。


部屋の隅を照らす小さな灯りが華麗な者達を照らす。

このジュニアをどうしようか。

寿は上を向いてちらっとサンガの姿を横目で見る。
綺麗な顔立ち。さぞかしモテまくってきただろう。

でも萌えねぇんだよなぁ。

少女のようにも見えるこの青年を響はどうやって犯したのだろうか。
あのドリンク業界のパーティーがあった夜、サンガはホテルの一室に連れ込まれ童貞を奪われたという。

サンガにしてみれば若葉に恋をした瞬間、無理やり犯され初物を奪われたのだ。
やりきれない思いも、屈辱もあっただろう。
同情してやりたいとも思う。
そう、相手がこの響でなかったら。
今では同情どころか、このか細い青年に三鳥井寿とあろう者が嫉妬し、めちゃくちゃにしてやりたいと思ってしまう。

どうやって響の口を味わったのか。
どうやって響に愛撫されたのか。
響のベニスを受け入れたのか。


世界中のセレブ達が金を積んで抱きたがっている名波響。
コカの恋人というアクセサリー的な意味ではない。コカが夢中になっているその性技を堪能したいのだ。

特に有名なその舌使い。
フェラの技。

あの大富豪であるRですら求める幻のセックス。

それをまぁ、こんな細っこい男に惜しげもなく与えちゃうなんてな。響も罪作りな奴。

寿はふっと笑った。Rが知ったら嫉妬からサンガは明日にでも四肢を切断され、バンビの剥製のように壁へかけられかねない。

こいつが馬鹿みたく吹聴しないといいけど。

綺麗なサンガの顔を見ていても埓があかない。
大同と寝たら恋だの愛だのうるさそうだ。
希鈴、あさひ、れもんは後々面倒な事になりそうだ。

ちらっと円青樹を見る。

綺麗だぁ、と寿は頬を染める。

あぁ、この男に抱いてもらったりフ、フ、フ、フ、フェラをしてもらったら、もうその視線だけで達してしまいそうだ。
髪から潮な香りがする。ワイルドで漢らしい。

しかし彼の腕には極上の寝顔を浮かべる伊藤若葉がいた。

はぁ、と寿は小さく溜息を吐いた。


 全く。幸せそうに円さんに抱かれちゃって。

寿はふと若葉をじっとみた。

円さんが若葉君のフェラを妙に誉めていたな。

女神の舌をもつ女帝の孫である響と若葉。まさか、若葉も名波のようなフェラが出来るとか?
考えてみれば名波より、若葉のほうが味覚センスが抜群に良い。
もちろんコカに育てあげられた響にはまだ到達しないだろう。しかしこの先、円青樹が育てたら?

寿は若葉の寝顔を見ながらペニスに手を置いた。
格下だからと舐めているうちに、実は最高級の品質を持っていた猫達をコカと円に奪われた。

悔しい。

そう寿は思い、唇を噛む。
いつもこの二人に先を行かれる。三鳥井家に生まれたという驕りが、ビッグチャンスを二度も逃す結果を生む。


あの、響に初めて会ったホームパーティー。
「三鳥井君。こちらは名波響君だ。パーティーに初参加だそうだよ。同じ日本人同士仲良くしようではないか」
 コカに紹介された美しい少年。繊細で、抱き締めたら壊れてしまいそうな体。
名波、というと伊藤苑グループ女帝の息子か、と寿は思う。
響の可憐な雰囲気は全く母親に似ていなかった。
それよりも何故、同じ日系ドリンク会社の息子を、アメリカ資本である古河家の人間が俺に紹介するのか。
寿は顔には出さず、むっとした。もちろん自分が女帝の立場でも同じ事をしただろう。一番最初に、一番強い奴に挨拶するのは当然だ。だが何故、ジョンがこの少年を紹介して回っているのだ。
それは誰の目にも「古河・C・ジョンが響を気に入った」と映った。そしてそれは事実だった。
こんな小さな少年に……と、嫉妬や羨望が混じった視線が響に送られる。女帝はにっこりと笑いながら、響とジョンを見ていた。
「よろしく。俺は三鳥井寿。寿って呼んでくれ。仲良くしようぜ」
「はい。寿……さん。私の事は響とお呼びください」
ガキのくせにちゃんと教育が行き届いてやがる。
三鳥井はふっと笑った。


「希鈴君は?」
「もう大人気っスよ。ほらあの人混みの中心にいます」
「モテモテな子だものねぇ。希鈴君! ちょっといいかな?」
女王のように座り、人々を侍らしていた希鈴がむっとして立ち上がる。
「なによ。あたしを呼びつけるなんて。くだらない用事だったら怒るわよ」
この中で一番小さな子が、ピンヒールを履きやってきた。上目遣いでコカと三鳥井を睨む。
「ニューフェイスの名波響君だ。同じ日本人として仲良くやっていこう」
「はっ! ライバルの間違いでしょ? まったく。あたしは井上希鈴。響、あんた、こんな毒蛇みたいな男に騙されるんじゃないわよ。頭からぺろっと食べられちゃうんだからねっ!」
「希鈴君はきついなぁ」
「ジョン程じゃないわよ。何事かと思ったら美少年侍らせて自慢しに来るとか!」
希鈴は下から舐めるように響を見回した。
響は真っ赤になって硬直する。
「ふぅん。名波女帝の息子さんかぁ。ぜんっぜんお母様似じゃないのね。あのひょろっとした草食系のお父様にそっくり。女帝似だったらもっと仲良くしてあげるのに! まぁ、いいわ。何かあったらあたしを頼りなさい。この色恋しか頭にない二人よりは、的確なアドバイスをあげられるわよ。学校も一緒でしょ? 困った事があったらあたしに聞きなさい」
「名波響です。ありがとうございます、希鈴さん」
「希鈴でいいわよ。あんたより年上だけどぉ」
「え!? そうなんですか!?」
「……あんた、今、あたしの事、チビだって思ったでしょ?」
希鈴が怒りに震えながら響を見た。
「いいえ。あの……小さくってふわふわしててキラキラ輝いていて、愛らしいなぁって」
「小さいですってぇええええ!」
 希鈴はぽかんっと響の頭を叩いた。
「いたっ!」
「あたしのコト、チビって言ったら承知しないんだからね!」


あれから寿と響と希鈴は同じ学校という事もあり、よく顔を合わせていた。
ただ寿と響は同じドリンク業界の子供と言っても企業規模が違うため、ほんの少し距離があった。
響はすれ違う時、いつも希鈴とつるんでいる寿に微笑みかけ、挨拶をした。

だがそれは少し他人行儀な感じを寿は覚えた。

寿はいつも美しい少年に惹かれ、振り返りながらも、距離を縮められなかった。
付き合うにはちょっと遠い。かといってセフレとして付き合うには惹かれ過ぎている。
そんな距離感に悶々としながら、寿は響とつかず離れずな関係を保っていた。

「寮長の誕生日に響が呼ばれるそうだよ」
そんな噂が流れてきたのはあの事件の一週間前だった。
「へぇ。俺も二年前に呼ばれたぜ」
寿はランチを食べながら、無関心を装った。
「名波もやるよな。これでセレブグループの仲間入りだ」
「成績優秀だから、後々囲い込みたいと考えたのだろう」
「誰か響と寝た事ある?」
周囲がシンッとする。
「まさか響ってチェリー?」
寿の脈拍が上がる。
「いいんじゃねぇの。響のヤツ、あの先輩達の事、好いてるし」
馬鹿みたいな発言を寿はわざとする。

なんとなくそわそわする同窓生達。


「じゃあ寮長達が最初かぁ」
呑気な同級生の言葉。

寿の脈拍がさらに上がる。

「先に誰か食ってしまえば?」
「寮長にレジスタンス?」
「言い出しっぺのお前が食えよ」
「勘弁。俺、寮長達に睨まれたくない」
「そりゃそうだよな」
皆がどっと笑う。

あの白い肌。赤い唇が寮長達に蹂躙されるのか。
寿はふと寮長達のバースデーパーティーの事を思い出した。

まぁ、その時は寮長ではなかったが。

押さえつけられ、ベニスを舐めさせられ、乳首に、蕾に、手が伸びる。
何度も何人も幾度も翌日まで続いた饗宴。
別に嫌ではなかった。しかし何度も繰り返される快感に気が狂いそうになった。
しゃぶられ、しゃぶらされ、握って、握られ、入れられ、入れられ、ベニスが、バイブが、指が、舌が、エネマグラが快感を引き出す。

過去の自分がいつしか響の姿に変わる。

あの白い肌に先輩達の手が伸びて、押さえ付けられる。

キスをされ、舌を入れられ、服が一枚一枚脱げていく。

象牙のような麗しい背中。
先輩の手がズボンに触れる。
ベルトが外され、ズボンと下着が剥ぎ取られ、露わになる下半身。

白くて、ぷりっとした尻。

恥じらう響が後ろを振り返る。

足がゆっくりと広げられて……。

「な〜にズボン膨らませて想像してんだよ、寿」

同級生にからかわれ、俺はふっと笑った。

「響の奴を後ろから犯しているのを想像してた」
「ヒュー! レジスタンスやんのか?」
「まさか。アメリカの市場を失うよ。童貞なんてメンドイ男は先輩達にくれてやる。それからじっくり開発さ」
「やるねぇ」
「寿は響と同郷なんだろ? 日本人だよな」
「あぁ、だから手を出しにくくってな。でもバージンじゃなきゃ、適度に遊べるだろ」
「そりゃそうか。俺も響と寝ようかなぁ」
眼鏡君が笑いながら言う。
俺は怒りを抑えながら、言い放った。
「響と寝られるわけがないだろ? そんときゃ俺にメロメロさ」
そう俺が言うと皆がどっと笑った。
「自信家だな」
「きらいじゃないぜ」
俺は笑いながら部屋を出て、トイレへと向かった。

響の白い項が俺を捕らえて離さない。

あの尻を押さえて……奴のペニスを扱いて……唇で背中にいくつも痕を付けて……奴の蕾をゆっくりと犯す。

あの赤い唇から漏れる艶声を聞いてみたい。
どんな声をあいつは出すのか。
背中を反って、ケツを振って、俺への……愛を奏でながら……。

「はぁ……はぁ……は、はっ、あ、あっ……はぁ……あ、あ、あっ、っうっ!!」

俺は空想上の響を犯した。
白いスペルマは便器の中へと、散った。


あと数日で響は先輩達に犯される。
やつのチェリーは奪われる。

寿は表情を変えないまま、響の体を空想した。

俺は別にチェリーじゃなかったが、響は絶対にチェリーだ。
あの恥じらいと無防備さ。

寿は彼の肌を妄想しつつ道を歩いていた。

「あっ!」
「すまん!」
なんという偶然だろうか。

街に響が来ていた。それも俺にぶつかってくるなんて……運命?

「あ、三鳥井さん」
「俺の名前は三鳥井寿。寿と呼べ。俺はいつも響って呼んでるだろ?」

響が頬を染めて寿を見る。

……もしかして脈あり?

寿は響の顔をじっとみながら、そんな風に考えた。

「寿……君も買い物?」
「ああ、ペンを買いにきた。お前は?」
「先輩の誕生日プレゼントを探しにきたんです」


なんとなく寿はむっとする。
誕生日プレゼントを渡すのは当たり前なのだが、響が先輩に渡すのが気に入らなかった。
「寿君、良かったらプレゼントを一緒に探してくれないかな」
「いいぜ。ペンを買ったら暇だからな」
「じゃあその文房具店に行きましょう」
「ああ」

何これ、デートじゃねぇか?

寿は表情を変えないまま、心の中でニヤついた。
響が上目遣いで寿を見る。
「ありがとう」
……可愛い。
ヤバい、可愛い。
響を近くでまじまじと見た事がなかったが、めちゃくちゃ可愛い。
思った以上に可愛い。


長い睫とか、冷たそうでいて甘い瞳とか、柔らかそうな唇とか。
「なにか?」
そう言って響が上目遣いで寿を見る。

誘ってんのか!? わざとなのか!?
なんでそんなもの欲しそうな瞳で俺を見るんだ!
いや、ただ単に俺が格好良いからだろう。だから響も興奮しているに違いない。俺が今異様な程、ハイテンションなように、響もきっと。

寿はちらっと響の下半身を見る。

盛り上がりに欠けるな……。俺はビンビンだというのに。

「いや、お前、意外とタッパあるんだなと思ってさ」
「うん。最近、伸びてきたんだ」


にっこりと笑うその笑顔。
無防備に体を寄せてくる。
ペンを買ってから、文房具屋を見て回り、二人はあれやこれやと語りあい、最終的に先輩へのプレゼントをスタイリッシュなデザインのブックエンドにするのだった。

「ありがとう。寿…はセンスがいいなぁ。私だけだと見付けられなかったよ」
名前を呼びながら、響はちらっと寿の様子を見る。
企業規模的に響は寿を呼びつけには出来ない。
寿がにっと笑うと、響はほっとしたように微笑み返した。
「まぁな。俺、先輩方と仲もいいしさ。数年前誕生日会に呼ばれた事もある」
「そうなんだ。どんな風だった?」
そう訊く響の顔を寿はじっと見つめた。

朝まで乱交だったぜ。
お前も朝まで……。

そう寿は思いつつ響の体を見る。

いくな。

そう言いたい。

でも言えない。

熱い葛藤が寿の体を駆け巡る。


「買物も終わったし、ソフトクリームでも食べないか? 美味しい店を知っているんだ」
寿がそう言うと、響がくすくすと笑った。
「寿ってソフトクリームを食べるんだ」
「なんだよ。おかしいか?」
「イメージに合わない」
「お前が好きそうだと思ってな」
「……ん。私は……ソフトクリームが結構好きだ」
響は少し頬を染め、俯いた。
「子供っぽいかな?」
「いや? 俺は嫌いじゃないぜ。白くて甘くて、響みたいだ」
「なんだよ、それ」
響があはは、と笑った。

俺は普段、ソフトクリームを食べないがな。下心が無ければね。

寿がソフトクリームを買い、響に渡した。

「今日、付き合ってもらったから、俺のおごり」
「私の方こそ付き合っていただいたのに……でも遠慮しないでいただくよ。ありがとう」
「いやいや」
寿は椅子に座り、ソフトクリームを舐めながら響を見る。
響は両手でコーンを持ち、仔猫のようにペロペロとアイスを舐め始めた。

………………。
どうしたらいいんだよ、このキュートな姿!
写真を撮ったら怒るだろうなぁ。

暫く響の姿を見ていた寿は、ふっと彼に顔を近付けた。

「響」

寿に呼ばれ、一生懸命ソフトクリームを舐めていた響が顔を上げる。

その白磁のような頬に。

寿の唇が触れる。

そして舌が。

つぅーっと頬から口角へと流れる。

少年達の赤い唇が、ほんの少し、重なった。

響が驚き顔を真っ赤に染め、体を硬直させたまま寿を見つめていた。

一瞬。

それでいて長く感じる時。

二人は触れ合っていた。

唇をそっと、端だけ重ねていた。

まるで恋人同士のように。

寿がゆっくり唇を離し、極上の美しい笑顔を響に向ける。

「お前、ほっぺたにアイスが付いてたぞ」

響は真っ赤になったまま寿を見つめていた。
そして頬に手を置く。

「あ……。ありが……とう」
「ははは、意外と子供っぽいんだな」
「いや、普段はそんな事はないんだけど……街に出て緊張してたのかな」
「そうかもな」

やべぇ、あの唇、思った以上にぷくっとしてやがる。
こいつ男を誘うなぁ。

寿はにやにやする表情を全力で我慢しながら、クールなハンサムフェイスをしつつ、響を見つめていた。

あと数日でこいつの童貞は奪われるのか。

寿はふと、俺だけを見ていて欲しい、などと思ってしまった。
会社の規模的にも、響と一緒になる事は出来ない。
出来たとしてもそれは結婚ではなく、養子縁組になる。
仔猫のようにソフトクリームを一生懸命食べる響を寿はじっと見つめていた。

あと少しで、こいつは先輩達にやられて……下手したらセフレとしてキープされる。
そうしたらもう二度と手が出せない。

でも……そんな事がなくても俺はこいつに手が出せないではないか。
それが三鳥井寿として生まれて来た宿命だ。
会社の決議がなければ、結婚は出来ない。

寿はふっと悲しそうに笑い、ソフトクリームをぱくっと食べた。



その後、あの事件が起こって、翌日から響とコカが恋人同士だと噂されるようになったんだよな。
先輩達は傷害事件を起こしたとして、グループごと退学になったんだっけ。
コカが響を助けたと、噂になっていたな。

寿は赤い蒲団にくるまって、コカの腕に抱かれる響を覗き見ていた。
子供の頃の甘さが消えた端正な顔立ち。その淫乱さが全く伺えない清楚で真面目な雰囲気。
コカが大切そうに腕枕をして抱き締める。

たまに響はくんっと匂いを嗅ぎ、何かを探す。
ゆっくりと移動し、弟の伊藤若葉に近寄る。
若葉がくんっと匂いを嗅ぎ、円青樹の腕を降り、響へと向かおうとする。

それをコカと円が阻止し、ぐいっとお互いの胸へとパートナーを抱きかかえる。
すると美しい兄弟は、お互いのパートナーの匂いを嗅ぎ、安心の笑みを浮かべ深い眠りに落ちるのだった。

コカと円さんの敵は、最大級の兄弟愛だよなぁ。
寿は薄目で見ながら、心の中で笑った。

続く→ http://fujimashion.seesaa.net/article/290124096.html
posted by Fujima at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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